記念コンサート II「Orgelversper・オルガンによる夕の祈り」   

2008年 06月 08日

ヨハン・セバスティアン・バッハ Johann Sebastian Bach (1685-1750)
幻想曲 ト長調 BWV 572
Pièce d’Orgue in G, BWV 572

エルンスト・ペッピング Ernst Pepping (1901-1981)
「オルガンの為の賛歌」より「おお輝かしき光三位一体」
aus „Hymnen für Orgel“ O lux beata Trinitas

ヨハン・セバスティアン・バッハ
聖歌「愛する神のみに従う者」による3つのコラール前奏曲 
BWV 691, BWV 692, BWV 642
Drei Choralbearbeitungen „Wer nur den lieben Gott lässt walten“

マティアス・ケルン Matthias Kern (1928*)
オルガンの為のリトネル
Ritonell für Orgel

I 門は開いている、それ以上に心も開いている。
Porta patet, cor magis
II 見よ、神の幕屋が人の間にある。
Siehe da, die Hütte Gottes bei den Menschen
III 彼があけぼのの星である。
Er ist der Morgensterne
IV 霊は天に住まいがある。
Der Geist selbst aber hat seine Wohnung im Himmel
V 信仰は神への強い希望。
Der Glaube ist eine starke Hoffnung zu Gott
VI 神はわたしたちを祝福される。
Deus benedicat nobis

マティアス・ヴェックマン Matthias Weckman (1621-1674)
第二旋法によるマグニフィカート
Magnificat II. Toni

第一節Primus versus、第二節Secundus versus、第三節Tertius versus、第四節Quartus versus

ヨハン・セバスティアン・バッハ
天にまします我らの父よ BWV 762
Vater unser im Himmelreich BWV 762

カール・ザットラー Carl Sattler (1874-1938)
「めでたし、女王、憐れみの母」による幻想曲とフーガ op.5
Fantasie und Fuge über „Salve Regina“ op. 5

オルガン トーマス・マイヤー=フィービッヒ (国立音楽大学作曲科教授)

プログラムノート
名古屋オルガンの秋、2回めのコンサート 「Orgelversper・オルガンによる夕の祈り」では、オルガン音楽が育った本来の場、教会の典礼・礼拝で使われる祈りの音楽を中心としてプログラムが組まれました。

カトリックの教会では、イエス・キリストの最後の晩餐を記念しておこなう「ミサ」の他にも、一日の各時間を、祈りをささげることで聖化することが目的の、聖務日課(時課の祈り)という典礼の形があります。
その中でも特に、ラウデス(Laudes)と呼ばれる太陽が昇るころの朝の祈りと、ヴェスパー(Vesper)と呼ばれる日没時の夕の祈りが重要な祈りの時とされており、これらに加えていくつかの決まった形の祈りが一日の中の決まった時間におこなわれます。
Vesperは晩課とも呼ばれ、ベネディクト会の方法では次のような構成から成り立っています。
祈りの始めの招詞 ― 賛歌 ― 詩編唱(3つから5つの異なった詩編) ― 朗読と短い答唱 ― マグニフィカート(マリアの賛歌) ― 共同祈願、主の祈り、結びの祈願 ― 派遣の祝福
これらの各部分は、本来ならば全て言葉で祈られ、又は歌われるものですが、このコンサートでは、オルガンが楽曲を通して全ての祈りの部分を演奏します。

最初の曲、バッハ作の幻想曲はこの祈りの時への招きの曲として奏でられます。

その後、「おお輝かしき光三位一体」という、三位一体のお祝いの日に歌われるグレゴリオ聖歌の賛歌を基として作られた作品が弾かれます。

「愛する神のみに従う者 (Wer nur den lieben Gott lässt walten)」という聖歌はドイツ語聖歌のなかでも最も美しく、又好んで歌われるもののひとつですが、その内容は詩編55番の23節、「あなたの重荷を主にゆだねよ/主はあなたを支えてくださる。」に因っていると考えられていますので、本日は、異なった詩編を幾つか唱える代わりに、この聖歌についてバッハが作った前奏曲を3曲集めてみました。

詩編唱の後、聖務日課では短い聖書の句が朗読されます。ドイツの作曲家、マティアス・ケルンは「オルガンの為のリトネル」という題で、信仰のすがたを6つの異なった副題の小品で表しました。これらの副題は、聖書(II, V)、聖歌(III)、ルターと同時代の神学者コルヴィニウスの墓碑(IV)から引用されたドイツ語の聖句についての小品が、ラテン語の聖句をモットーとした小品(I, VI)に挟まれています。
モダンな作品で、少し耳慣れない音楽かも知れませんが、是非、これらの「ことば」を音楽の中に感じてください。

「マグニフィカート」とは、イエスを懐胎した事が判った聖母マリアが、洗礼者ヨハネを懐胎していたエリザベトを訪問した際に、
「あなたは女の中で祝福されています。胎内のお子さまも祝福されています。」と言ったエリザベトに対して
「わたしは神をあがめ、わたしの心は神の救いに喜びおどる。
神は卑しいはしためをかえりみられ、いつの代の人もわたしを幸せな者と呼ぶ。
神はわたしに偉大なわざを行われた その名はとうとく
あわれみは代々神をおそれ敬う人のうえに。
神はその力を現わし、思いあがる者を打ち砕き、
権力をふるう者をその座からおろし、見捨てられた人を高められる。
餓えに苦しむ人はよいもので満たされ、おごり暮す者はむなしくなって帰る。
神はいつくしみを忘れることなく、しもベイスラエルを助けられた
わたしたちの祖先アブラハムとその子孫に約束されたように」
との言葉で答えたもので、ラテン語でこの句が「Magnificat anima mea Dominum」と始まることから、「マグニフィカート」と呼ばれます。
夕の祈りの中でも一番重要な祈りとされる聖句(ルカによる福音書 1.47-55)でもあり、多くの教会音楽家・作曲家がこの典礼の部分のために作品を残しています。
声楽曲としてはバッハのそれのように、この聖句に新しく旋律をつけた楽曲の形式にすることが多いのですが、オルガン曲の場合、「わたしは神をあがめ...」と歌うグレゴリオ聖歌に対して「神は卑しいはしためをかえりみられ...」の節がオルガンで演奏されるように、聖歌とオルガンとが交互に演奏をすることを想定して作られた短い節形式の楽曲が普通です。

その後、イエスが教えた祈りとしてキリスト教を信仰する者にとっては最も大事な「主の祈り」と言われる祈りが唱えられます。マルティン・ルターは「主の祈り」の句を基に、その内容を節のついた聖歌にし、バッハはその聖歌を曲の中に織り込んだコラール編曲 (Choralbearbeitung)を作りました。

本来ならば、「夕の祈り・晩課」の後、就寝前に祈られる「終課(Complet)」の終わりに「マリアの交唱」と呼ばれる聖歌が歌われます。Alma Redemptoris Mater, Ave Regina coelorum, Regina coeli, Salve Reginaの聖歌が時節に応じて歌われるものですが、今晩のコンサートは、この「Salve Regina」をテーマとして作られた作品で終わります。
(吉田文 記)
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by principal8 | 2008-06-08 18:26 | 2007・名古屋オルガンの秋

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